政治、政府、業界団体のブロッキング動向
ここ数日話題になっているブロッキングについて、技術や法律について話題が出ているのですが、政治、政府、業界団体の動きをまとめます。
概要
- 2018年3月19日、菅官房長官は記者会見の中でニコニコ動画記者からの海賊版の早期対策に関する質問に対し、「インターネットの海賊版に対し、サイトブロッキングを含め、あらゆる方策の可能性を検討している」と回答。
- その後、2018年4月13日、知的財産戦略本部会合・犯罪対策閣僚会議はサイトブロッキングに関する「インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策」(案)を示した。これに対して、出版社、著作権団体は賛成の意見表明を行った。また、NTTはブロッキングを行うとする方針を2018年4月23日に打ち出した。一方、インターネット団体はブロッキングに慎重な立場を表明している。
海賊版対策としてのブロッキングに関する議論
- 内閣府の知的財産戦略本部では、2016年5月の知的財産推進計画2016以降、海賊版対策としてのブロッキングに関する議論が始まっている。ただし、2017年12月時点までは、知的財産戦略本部において目立ったブロッキング推進派の動きはない。
- 2017年末までの知的財産戦略本部をみると、会合において、著作権侵害に対するブロッキングは検討課題に留まっていた。文化庁が行った調査でもブロッキングに関しては、その効果が限定的であることが示されている。
- 2017年5月の自民党の知的財産戦略調査会の提言では、ブロッキングに関する言及はない。2018年2月の知的財産戦略本部の会合以降、ブロッキングに関する議論が急展開した。
- ブロッキングを扱う、総務省、文化庁はブロッキングに対して慎重な様子である。ISPもブロッキングに対して慎重な姿勢を示している。ただし、2018年4月23日のNTTのブロッキングの対応に関するプレスリリースをみると、KDDI、ソフトバンクも行う可能性がある。
政治面の動き
【自由民主党政務調査会】
- 2017年5月に発表した自由民主党政務調査会知的財産戦略調査会(当時の会長は保岡興治前衆議院議員)の「知的財産立国に向けての知的財産戦略に関する提言」にはブロッキングに関する言及はない。
- 保岡議員が2017年の衆議院選挙不出馬となったことにより、2017年11月に甘利明衆議院議員が会長に就任した。
- 2017年11月以降に知的財産戦略調査会の目立った動きはない。
- 2018年年始に甘利明会長と著作権団体の賀詞交歓会が行われていることは確認できた。
【漫画・アニメ・ゲームに関する議員連盟(MANGA議連)】
- 2018年4月17日の報道では古谷衆議院議員(MANGA議連会長)がブロッキングはMANGA議連が推進したものではないことに言及した。
- 2017年12月、MANGA議連は漫画やゲームなどの資料を幅広く収集、保管する「メディアナショナルセンター」(仮称)を整備するため、各党で党内手続きをすすめることを確認した。
政府内の動き
- 2016年5月 内閣府知的財産戦略本部「知的財産推進計画2016」
ブロッキングという言葉が計画に入る。「デジタル・ネットワーク時代の知財侵害対策として、諸外国におけるサイトブロッキングの運用状況の把握等を通じ、その効果や影響を含めて引き続き検討を行う。」 - 2018年2月16日 内閣府知的財産戦略本部 知的財産推進計画2018策定に向けた検討検証・評価・企画委員会 第3回
この会議ではブロッキングに関するデメリットが発表される。
神戸大学法学研究科 准教授 木下昌彦
「原則、司法的ブロッキングによるべきであり、司法的ブロ ッキングにおいては実効性が欠けるというような立法事実が認められない限り、より検閲 性の高い行政的ブロッキングの採用は認められないのではないかと考えられる。」 - 2018年3月19日、菅官房長官は定例記者会見の中で、ニコニコ動画の記者による「マンガ・アニメの著作権者に約4000億円の損害があり、政府内で早期の対策を検討しているか」という質問に対し、「インターネットの海賊版に対し、サイトブロッキングを含め、あらゆる方策の可能性を検討している」と回答した。
- 2018年4月2日、内閣府知的財産戦略本部 知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会(産業財産権分野・コンテンツ分野合同会合(第5回) 知的財産戦略ビジョンの策定に向けた論点整理(案)
「リーチサイト規制、サイトブロッキング等悪質な海賊版サイトへの多層的かつ実効性ある対抗手段の導入」とする項目が【中・長期的】な論点として出される。
業界団体の動き
- 2018年4月6日 毎日新聞「海賊版サイト遮断要請へ 政府、著作保護に「緊急避難」」が報道され、各団体が声明を発表している。
- 一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の予算が平成30年度をもって終了するため、同法人がブロッキングの対象リスト管理団体として延命したいとの意見がある。しかし、CODAは2017年11月時点で、ブロッキングを違法コンテツの撲滅に対する根本的な対策とはみなしていない。CODAは資金源を立つフォロー・ザ・マネー対策に注力していると宣言している。
CODA後藤代表理事
「違法コンテンツへのアクセスをブロックするだけでは根本的な違法コンテンツの撲滅はできません」
賛否の状況(整理中)
賛成
- 株式会社日本国際映画著作権協会
- 一般社団法人日本レコード協会
- 出版広報センター(日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本電子書籍出版社協会、日本出版インフラセンターの4団体が設立した、出版物に関する権利団体)
- 講談社
- 集英社
- KADOKAWA
慎重
-
一般社団法人インターネットコンテンツセーフティ協会
著作権侵害サイトへの対策として立法プロセスを経ずブロッキング施策を要請することについて 2018年4月11日 -
JILIS 一般財団法人 情報法制研究所
著作権侵害サイトのブロッキング要請に関する緊急提言の発表 2018年4月11日 - JAIPA 一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会
海賊版サイトへの対策として政府がブロッキング(接続遮断)を要請することについて - MIAU 一般社団法人インターネットユーザー協会
政府による海賊版サイトへのブロッキング要請に反対する緊急声明 - JPNIC 日本ネットワークインフォメーションセンター
政府によるサイトブロッキング要請報道への当センターの見解 2018年4月12日 - WIDE
漫画・アニメの海賊版サイトに関するWIDEプロジェクトの意見 2018年4月11日 - ISOC-JP Internet Society 日本支部